後悔したくないなら、今日から日記を書いてほしい
「怒鳴られるために生まれてきたんじゃないか」
30代のころの私は、本気でそう思っていました。
当時、会社の業績を伸ばすために
コンサルタントの先生にお金を払って
指導を受けていました。
でも、その先生は私に対して常に厳しく、
時には怒鳴り散らしました。
「お前は理解力がなさすぎる」
「何もわかっていない」
そんなふうに言われるたびに心が縮こまり、
私は人前で泣いてしまうこともありました。
ある日、いつものようにファミレスで指導を受け、
泣いていたら、心配したお客さんが
警察を呼んだほどです。
今思えば、異常な状況でした。
それでも「会社のために」「部下のために」と
自分を納得させ、
私は従い続けていました。
完全に“洗脳”されていたのです。
信じてしまった理由

なぜそこまで従ってしまったのか。
それには私なりの理由がありました。
母が精神疾患を抱えていたことが
大きかったと思います。
母は統合失調症で、
幻聴に苦しんでいました。
それでも「自分は正常」だと信じ込み、
病院に行こうとしなかった。
私は子どもながらにどうすることもできず、
ずっと不安を抱えて生きていました。
そんなときに現れたのが、
そのコンサルの先生でした。
勉強ができず、大学受験にも失敗していた私に、
先生は勉強法を教えてくれました。
そのおかげで専門学校から
国立大学に編入するまでになれた。
あのときの私にとって、
先生は“人生を変えてくれた恩人”
だったんです。
だからこそ、私は先生を信じてしまった。
母が再発したときも助けてもらい、
気づけば職場の悩みまで
相談するようになっていました。
当時は転職も一般的ではなく、
「石の上にも三年」
という価値観を信じ込んでいた私は、
相談相手を変えるという発想すら
ありませんでした。
「上に立て」と言われて

そんな私に先生が言ったのは、
こういう言葉でした。
「楽に生きたいなら、上に立つしかない」
弱い立場でいたら母のように病気になるのではないか、
そんな恐怖が私を支配していました。
だから「そうならないために上を目指すしかない」と
信じ込んでしまったのです。
その結果、私は最年少、そして女性初の管理職
という立場にまでなりました。
一見すれば輝かしいキャリアです。
そこに至るにはコンサルの先生の努力もあった。
そこに関しては本当に感謝はしています。
けれど、実際の私はまったく幸せではありませんでした。
誇らしさではなく、違和感ばかり

ある新年のこと。
業者さんが工場の代表である私に挨拶に来てくれました。
何人ものおじさんたちに深々と頭を下げられたのに、
胸の奥に浮かんだのは違和感でした。
「私は、こんなので悦にひたりたいわけじゃない」
部下の結婚式に社長と同じ席で座ることも苦痛でした。
スピーチを求められるたび、
心臓がバクバクして逃げ出したくなる。
誇らしいどころか
「ここにいたくない」
と思っていました。
偉そうにしたいわけじゃない。
ただ普通に、穏やかに働きたかった。
でも、その気持ちを誰にも言えずにいました。
「日記を書け」と言われていたのに
そんなとき、先生から「日記を書け」と
言われたことがあります。
でも、私はやりませんでした。
「そんな暇があるなら結果を出さないと」
「泣き言を書くなんて甘えだ」
そう思っていたからです。
今になって思います。
もしあのとき日記を書いていたら──。
「私は本当はどう感じているのか」
「何が嫌で、何を大事にしたいのか」
もっと早く気づけていたかもしれません。
当時の私は完全に自分の声を無視し、
他人の言葉だけを信じていました。
だからこそ、今は心から思います。
あの時こそ日記を書くべきだった、と。
日記を書き始めてからの変化

限界を迎えた私は、ようやく日記を書き始めました。
怒鳴られても、ノートに書くことで
「私は今、不安なんだ」
「本当は悔しい」と
気持ちを整理できるようになったのです。
日記を続けるうちに、少しずつ自分の声が
聞こえてくるようになりました。
「私は本当にこのコンサルに従い続けたいのか?」
「この会社にしがみつく必要はあるのか?」
その答えは、はっきり“NO”でした。
日記に書いた言葉が背中を押してくれて、
私はついにコンサルから離れ、転職を決意できたのです。
転職後も怒鳴られたけれど
転職先でも、正直に言うと怒鳴られることはありました。
でも、不思議とあの頃のように心を壊されることはなかった。
それは、日記があったからです。
毎日、心の中をノートに吐き出すことで
「私は傷ついている」と認められる。
「でも、私はちゃんと頑張っている」と書き残すことで、
自分を支えられる。
日記は、どんな言葉よりも私の味方でした。
そのおかげで、母のように病気になることなく、
私は今もこうして元気に生きています。
心理学が証明する「日記の効能」

ここで少し、心理学の研究を紹介します。
日記は単なる趣味や暇つぶしではありません。
心を整える“科学的な習慣”でもあるのです。
感情を言葉にするだけで落ち着く
心理学では「エモーショナル・ラベリング」と
呼ばれています。
自分の気持ちを言葉にするだけで、
脳の扁桃体(不安や恐怖を感じる部分)の活動が落ち着き、
ストレスが軽減されることが研究で示されています。
ネガティブに偏る心を整える
人は「ネガティビティバイアス」と
呼ばれる特性を持っていて、
嫌なことや失敗にばかり意識が向きやすいのです。
でも日記に「今日あった小さなよかったこと」を書くことで、
意識のバランスが整い、前向きな気持ちを取り戻せます。
自分にやさしくできる
さらに、「セルフコンパッション」という
考え方があります。
自分を責めてしまいがちなとき、
自分にやさしい言葉を書き残すだけで、
不安や孤独感が和らぐことがわかっています。
つまり日記は、感情を整理し、心を回復させるための
「科学的に効果のある習慣」なのです。
まとめーーーーあなたに同じ後悔をしてほしくない

私は日記を書かなかったから、
気づくのが遅れました。
その結果、人に支配され続け、
心をすり減らしました。
でも、日記を書き始めてからは、
コンサルから離れられた。
転職後も怒鳴られることはあったけれど、
病気にはならなかった。
それは間違いなく、日記のおかげです。
だからこそ、あなたには同じ後悔をしてほしくありません。
未来を変えるのは、今日のたった1行です。
「今日あった小さなよかったこと」
「今の自分の正直な気持ち」
「言葉にできないモヤモヤ」
なんでも構いません。
書き始めた瞬間から、未来は変わり始めます。
あなたの心を守れるのは、あなただけです。
私のように「もっと早く日記を書いていれば…」と
後悔してからでは遅い。
だからどうか、後悔する前に。
今すぐ、日記を書き始めてください。
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